[書籍紹介・目次] [まえがき]
本書は、現実感覚ないし現場感覚を喪うことなく、かつ科学的厳密性を保ちながらビジネスケーススタディをおこなうことを志す人々にとって格好の技法書である。特に革新的なビジネスモデルを創り上げた企業に関する事例研究を、確実な因果分析を念頭においておこなう上で示唆に富むアイデアが随所に盛り込まれている。
先進的な企業だけでなく、その追随者・模倣者を含めて革新的な経営モデルを採用していった企業組織の事例が既に一定数存在しているような場合には、各種の統計的手法あるいは本書の著者自身が『経営事例の質的比較分析』で解説を加えているQCA(質的比較事例分析法)によって比較的厳密な因果推論をおこなうことも出来るだろう。しかし、例えば、著者が本書でも取り上げているダイエーやセブン-イレブンのように、前人未踏のビジネスモデルを創始した企業がまだ1社ないしごく少数しか存在しない段階では、それらの手法はほとんど無力である。
ビジネス書などに見られるサクセスストーリー的なビジネスケーススタディの中には、それらの企業が初期の「成功」を達成するまでの道筋を明らかにしているものもある。しかし、それらはどれほど的確で詳細なものであったとしても記述、つまり、特定事例に関するWhat(どうなっているか)の問いに対する答えを提供するに留まる。それに対して、本書でその概要が一種の見取り図として示されている因果過程追跡法(causal process tracing)は、単なる記述のレベルを越えて、「なぜ(Why)、それらの先進事例がそのような道筋(過程)を辿ることになったのか」また「その因果過程に関する推論はどのような一般化可能な理論的・実践的なインプリケーションを持ちうるか」を示し得る可能性を秘めているのである。
(同志社大学教授・一橋大学名誉教授 佐藤郁哉)
[書籍紹介・目次] [まえがき]
著 |
田村正紀 著 |
出版年月日 |
2023/07/26 |
ISBN |
9784561267836 |
判型・ページ数 |
A5・152ページ |
定価 |
本体1818円+税 |
『因果過程追跡の基礎』, 推薦コメント
『因果過程追跡の基礎』 佐藤郁哉氏推薦コメント
[書籍紹介・目次] [まえがき]
本書は、現実感覚ないし現場感覚を喪うことなく、かつ科学的厳密性を保ちながらビジネスケーススタディをおこなうことを志す人々にとって格好の技法書である。特に革新的なビジネスモデルを創り上げた企業に関する事例研究を、確実な因果分析を念頭においておこなう上で示唆に富むアイデアが随所に盛り込まれている。
先進的な企業だけでなく、その追随者・模倣者を含めて革新的な経営モデルを採用していった企業組織の事例が既に一定数存在しているような場合には、各種の統計的手法あるいは本書の著者自身が『経営事例の質的比較分析』で解説を加えているQCA(質的比較事例分析法)によって比較的厳密な因果推論をおこなうことも出来るだろう。しかし、例えば、著者が本書でも取り上げているダイエーやセブン-イレブンのように、前人未踏のビジネスモデルを創始した企業がまだ1社ないしごく少数しか存在しない段階では、それらの手法はほとんど無力である。
ビジネス書などに見られるサクセスストーリー的なビジネスケーススタディの中には、それらの企業が初期の「成功」を達成するまでの道筋を明らかにしているものもある。しかし、それらはどれほど的確で詳細なものであったとしても記述、つまり、特定事例に関するWhat(どうなっているか)の問いに対する答えを提供するに留まる。それに対して、本書でその概要が一種の見取り図として示されている因果過程追跡法(causal process tracing)は、単なる記述のレベルを越えて、「なぜ(Why)、それらの先進事例がそのような道筋(過程)を辿ることになったのか」また「その因果過程に関する推論はどのような一般化可能な理論的・実践的なインプリケーションを持ちうるか」を示し得る可能性を秘めているのである。
(同志社大学教授・一橋大学名誉教授 佐藤郁哉)
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