経営学においても、自然科学と同様、因果関係を把握することを目指している。しかし、必要十分なデータが取れないことが多いため、少ない事例に基にした定性分析を用いることが多く、活用に制約がある。
しかし、十数年前に質的比較分析(Qualitative Comparative Analysis:QCA)が開発され、欧米ではすでに社会科学の研究にあたり広く活用されるようになっている。
QCAでは、少数の事例からでも因果関係の把握が可能で、分析手続きも一定に定まっており、原因条件や結果がファジーであっても活用できるため、特に経営分野では、その有効性は高い。
本書は、高い評価を受け、ロングセラーとなっている『リサーチ・デザイン』の著者が、QCAの基本的原理や分析手順、さらにそれをリサーチ・プロセスにどのように組み込むのかをまとめている。
著者は経営学者で、その事例を多く用いて説明しているが、他分野の研究者・学生にも理解しやすいものを選んでおり、また、用いられる数学もほとんど高校初年度で習う水準なので、事前知識なしで理解できる。
日本では、まだまだQCAの解説書が少ないことから、経営学のみならず、広く社会科学の研究に資する基本書となるだろう。
【佐藤郁哉 一橋大学大学院商学研究科教授(執筆当時)の推薦コメントはこちら】
[本の目次]
はしがき
第1章 事例研究の転換─実例から理論事例へ
1.なぜ事例研究を行うのか 2.実例から理論事例へ 3.理論事例研究ナビゲータとしてのQCA
第2章 事例を理論概念でどう捉えるか
1.事例容器としての概念 2.集合への配属方法 3.集合関係をつくるための基本演算
第3章 因果関係をどう捉えるか
1.集合関係を見る視点 2.クリスプ集合での十分条件と必要条件 3.ファジィ集合での十分条件と必要条件 4.因果複雑性
第4章 因果関係をデータからどう推論するか
1.データ行列から真理表へ 2.ファジィ集合の真理表作成 3.完備真理表の解
第5章 データは推論をどう支持しているか
1.データとの整合性 2.整合性水準の評価 3.推論結果の検証 4.必要条件の整合性と被覆度
第6章 真理表の解は何を意味するのか
1.論理残余の重要性 2.「標準分析」の解の特質 3.検討すべき解の選択
第7章 リサーチ・プロセスへQCAをどう組み込むか
1.デザインプロセスでの作法 2.分析プロセスの作法 3.デザインと分析の統合戦略:観光地アメニティ事例 4.最終結果の検討
著者 | 田村 正紀 著 |
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出版年月日 | 2015/09/16 |
ISBN | 9784561266648 |
判型・ページ数 | A5・232ページ |
定価 | 本体2,700円+税 |