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『世界標準研究を発信した日本人経営学者たち-日本経営学革新史1976-2000年-』、『質の高い研究論文の書き方-多様な論者の視点から見えてくる、自分の論文のかたち-』。この2冊が、刊行から半年を待たずして重版となりました。

近年、研究の世界でもすすむ国際化や大学改革の影響もあり、一流とされる国際ジャーナルへの論文掲載本数や被引用数が大学の“客観的”評価指標として採用され、日本語で研究書を書くよりも査読付き英文雑誌に投稿することを重視する若手研究者が増えているという話を耳にします。このような状況において、もしかしたら、研究するということについて、また、自身の研究者としての在り方について、思案する方が増えていることの証左のようにも思われます。

私自身は、学術書の編集者という仕事をはじめて数年がたちますが、「社会科学研究とは何か」をわかっているかと言われると甚だ心許なく、一編集者としてどうあるべきか、何ができるのだろうかを模索中です。しかし、研究書の中で、今まで考えもしなかったようなことが丁寧に解き明かされていき、示唆が提示されたとき、「へぇ~面白い!」とワクワクします。そして、これが書籍として世に出て社会で活かされていくことを考えると、校正・編集にも力が入ります。

『世界標準研究を発信した日本人経営学者たち』の小川教授の言葉にある、「経営学研究は知的冒険であり、未知の世界への挑戦そのもの」「知的興奮を味わわせてくれるのが経営学研究ではないのか」という、研究が持つ本質的な面白さ。一方で、『質の高い研究論文の書き方』のなかで青島教授が指摘される、「自分の好きな研究」「真理に近づく研究」「社会の役に立つ研究」「国際的な学術コミュニティで認められる研究」間での力点の置き方やバランスの取り方についての自分なりの選択。

想いや答えは幾千通りもあると思いますが、その根本に共通してある社会科学研究のもつ力とは何か。その力をどう活かしていくか。それに自分はどう向き合っていくか。

本特設サイトの内容についてはまだ試行錯誤の段階ですが、社会科学研究について考える場として、今後、皆さまに役立つコンテンツを追加していきたいと考えています。

編集部K