著者は「中国型イノベーションシステム」と名付けているが、中国企業は技術の自社開発にこだわらず、積極的に他者の技術を導入し、標準化された技術を活用してビジネスを展開する企業が多い。独自技術にこだわらなければ製品の同質化が進むが、中国企業はそれを忌避しない。これが模倣が横行する土壌となっている。
極端な同質化が進む環境を逆手に取って成功したメーカーが台湾のメディアテック社と中国の奇瑞汽車だ。メディアテック社はスマートフォンの基幹部品であるSoC(中枢機能を統合した半導体チップ)を生産しているが、技術力を持たない中小企業でもスマートフォンが作れるよう、中核部品とソフトウェアをセットにして売り込んでいる。本書ではこれを「基幹部品型プラットフォーム」と呼ぶ。
自動車メーカーの奇瑞汽車は逆にエンジンなど中核部品までも他社から調達することによって、技術的蓄積がないにもかかわらず飛躍的な発展を遂げた。本社ではこれを「共通部品型プラットフォーム」と呼んでいる。
中国の模倣におびえるのではなく、中国のビジネス環境、中国型イノベーションを理解した上で、そのシステムに参与出来るようなビジネス展開を考えるべきとの著者はメッセージを送っている。中国ビジネスにかかわるものにとっては貴重な提言だ。
高口康太 ジャーナリスト、翻訳家。 1976年生まれ。二度の中国留学を経て、中国専門のジャーナリストに。『ニューズウィーク日本版』『週刊東洋経済』など各誌に多数の記事を寄稿している。著書に『なぜ、習近平は激怒したのか――人気漫画家が亡命した理由』(祥伝社)、『現代中国経営者列伝』(星海社新書)。 |
著者 | 山田勇毅 |
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出版年月日 | 2016/06/06 |
ISBN | 9784561256779 |
判型・ページ数 | A5・224ページ |
定価 | 本体2800円+税 |