昨年10月に刊行された『香港 失政の軌跡』のここまでの反響をまとめました。
■ 書評・刊行紹介
・国際貿易2021年11月25日号(日本国際貿易促進協会発行)で紹介
監訳者の曽根康雄氏(日本大学教授)の解題を多く紹介し、「著者は住宅問題がとりわけ問題」などと、香港社会における住宅問題の深刻さに注目した紹介となっていました。
・世界2022年2月号のSEKAI Review of Book における「香港の悲劇─植民地構造と民主化への模索」(東京大学大学院教授・阿古智子氏執筆)
香港に関する書籍4冊をまとめて書評する中、高等教育や不動産・住宅政策などに言及しながら、「グッドスタットは、先進的な都市を適切に運営する上で必要不可欠な公共サービスを提供してこなかった歴代の行政長官と政府高官の政策は誤りであり、行政の欠陥の代償は大きいと強調する」のようにまとめていただいています。
・ジャーナリスト・大東文化大学特任教授の野島剛氏の執筆による『香港が「生き残りの文化を守るために」』(掲載:nippon.com)
香港に関する著作も持つ筆者により、本の内容や背景が深く掘り下げられ、「香港で抗議行動があそこまで巨大化・過激化した背景には確実に複合的な要因が存在する。現在も厳しい当局の責任追究が続くなか、解明に向けた客観的な議論すらできない状況にあるが、本書のような経済・社会の構造的状況からのアプローチは、ぜひ検討に加えられるべき分析の切り口である」などと評していていただいています。
・2022年2月23日付陸奥新報・北羽新報で紹介
「民主化運動激化の遠因分析」と題され、収支均衡にこだわり過ぎ、また、「市場原理を過信した結果、住宅や教育などの分野でゆがみが生じ、政府への不満が蓄積されていった、というのが著者の見解だ」と本書を紹介していただいています。
・東亜4月号「COMPASS」への監訳者曽根康雄氏の「香港社会の矛盾を封印した「泛民」主導の抗議行動」寄稿
オンライン読書会「経済問題から考える香港の現在」(下記参照)でのディスカッションを踏まえ、本書と合わせて取り上げられた『香港の反乱2019』(柘植書房新社)の議論と重ね合わせポイントを紹介。世界的に広がったグローバル化や新自由主義的な政策の抱える問題と、「北京と香港」「独裁対民主主義」というような二分法的な議論の限界を論じています。
・ジャーナリスト高口康太氏執筆による「警察出身の剛腕・李次期香港行政長官はどんな人物か」(WEDGE Infinity掲載)
香港政府が過度に新自由主義的と論じる中で、同書が紹介する温家宝首相(2011年当時)の発言を取り上げ、中国共産党でさえ香港政府のやり方を批判していたことを踏まえ、今後の李家超氏の課題を提示しています。
・アジア研究所所報(第186号)への、監訳者曽根康雄氏の「住宅問題が問う香港政府の覚悟」寄稿
本書を手掛かりに、香港社会が抱える歪みとそれを生み出した歴史的背景・構造問題について論じ、「政治的民主化を主張するリベラル政党でさえも、かつては最低賃金法の制定法に反対していた」などのエピソードを紹介しながら、第5代行政長官に民生重視が求められることを示しています。
■ 読書会・研究会
オンライン読書会「経済問題から考える香港の現在」(2月2日、神戸大学現代中国研究拠点主催)
ほぼ同時期に刊行された『香港の反乱2019』(柘植書房新社刊)と合わせてのもので、『香港 失政の軌跡』推薦コメント・書評を寄稿いただいた松尾匡氏(立命館大学経済学部教授)や監訳者の曽根康雄氏(日本大学教授)もパネリストとして登壇されます。
(2022年1月25日公開、4月26日最終更新)