『チャイナ・エコノミー』、無事発売になり、早々にあちこちでご紹介もいただき、好調な売れ行きとなっています。
先日来、解説の吉崎達彦氏が出演されたラジオ等でご紹介くださった(詳しくはこちら)他、神戸大学大学院教授の梶谷懐氏には、ツイッターで
この本はジャーナリスティックな関心とアカデミックな水準を両方満たす良書です。今中国経済について何か読むとするなら、この本1冊をじっくり読むことをお勧めします。
のようにもご紹介いただいています。
ところで、この本の編集作業が終わり、やれやれ、ということで、長らく読み進めるのを中断していた『人民元の興亡』(吉岡桂子著、小学館)を読み始めたら、とても面白くてあっという間に読み終えてしまいました。
吉岡氏が足で稼いだ、中国現代経済史をめぐる人間臭いエピソードの数々が、『チャイナ・エコノミー』が解説する経済発展のダイナミズムの裏側を描き出しています。
例えば、『チャイナ・エコノミー』には、中国の指導者たちは日本に学んだ、という箇所が何カ所か出てきますが、実際に誰が何を教えたのか、そこで何があったのか? 詳しくはこの本では語られません。まあ、語っていたら400ページでは済まないわけですが。
そこで、『人民元の興亡』です。
安斎隆氏(現セブン銀行会長)は、日銀時代に、十数回に渡る決済システムの研修に始まり、何度も何度も中国に出向いていたそうで、90年代前半、人民銀行の担当者たちは、
ソ連の崩壊に震え上がっていたという。改革開放は生煮えで、天安門事件で先進国から受けた経済制裁の痛手も残っていた。うかうかしていると自らも砕け散ってしまうのではないか
との恐れを口にしていたとのことです。
まさに、『チャイナ・エコノミー』のまえがきで、著者にある高官が語ったという、「(経済改革は)底なしの谷の上にはられた綱の上を歩くようなもので、しかもその綱は燃えており、背後から火が迫ってくる」という譬えを裏書きするような証言です。
この他、1990年代後半のアジア通貨基金構想や、人民元のSDR入りなど、国際的な、通貨をめぐるパワーゲームの内幕も記述されており、新聞・雑誌等で細切れには読んでいたはずの出来事・エピソードで、実際どんなやり取りがあったのか知ることができたのが収穫です。
『チャイナ・エコノミー』は分厚い本な上、『人民元の興亡』も分厚く、読むのに時間はかかると思いますが、中国は、現代のグローバルな政治・経済・社会を理解する上で最優先のキープレイヤーです。
その国としての骨組みとパーツの相互関係を中心に簡潔にまとめた『チャイナ・エコノミー』と、人の営みに注目した『人民元の興亡』、良い対照となっています。
3月13日 担当T