前回の更新から1カ月以上空いてしまいました。

言い訳をしますと、実は3月の後半はホーチミン市で開催されたブックフェアを見に行き、そのついでで、メコンデルタの水上マーケットを見てきました。アイキャッチで使っているのは、水上マーケットが開かれるカントー市で見かけた仏教寺院です。
ちなみにベトナムの仏教は中国から入ってきたものなので大乗仏教で、近隣のインドシナ半島諸国(上座部仏教)とは異なります。カントー市はホーチミンよりずっと南で、かつてはクメール人が多く住んでいた地域だったのですが、この左の写真でご覧いただけるように、漢字でお寺の名前や、仏教の教えらしきものが書かれています。

このように、古来、中国より多大な影響を受けたのは日本に限らず周辺国は軒並みであり、ベトナムも朝鮮同様、何度も「侵略」を受け、また政治や文化でも多大な影響を受けてきました。

そして現在はまた、中国の経済規模拡大に伴い、周辺国へ及ぼす力も否応なく強まっていて、そのような関心から『チャイナ・エコノミー』のサブタイトルの後半に「地政学へのインパクト」という文言を足したのですが、この本とほぼ同時期に、『チャイナ・インパクト』(園田茂人・デヴィッド・S・G・グッドマン編、東京大学出版社)が出版されました。私の現代中国へのもともとの関心が「中国周辺国は今後どうふるまうべきなのか」というものなので、ちょっと高かったのですが即購入し、ベトナム旅行の間、読んでいました。

この本には、ベトナムはもちろん、台湾やフィリピン、タイ・マレーシア・インドネシア、そしてオーストラリアまで、7つの周辺国で、実際どのように中国が見られているのか、どのように中国と付き合っていこうとしているのか、各国の中国研究者が寄稿しています。
そして、編者が、中国台頭の評価のメカニズムを、経済的要因、国際的環境要因、社会・文化的要因、政治・メディアの4つの視点から整理し、日本の「チャイナ・インパクト」へのインプリケーション(含意)をまとめています。
編者は、各国とも「中国崩壊論はさほど耳目を集めていない」と言い、一方で、日本も中国からの移民が多く、帰化した華人を加えれば相当な数でありながら、さほど話題にならないことを指摘しています。

また、これらの国々が中国との関係を考える上でアメリカとの関係が重要であることについて、各章、そして国際的環境要因の中で触れています。
特に興味深いのはベトナムで、そのイデオロギーや政治体制は中国に大変よく似ており、とりわけ20世紀末の中国には蜜月関係が極まりましたが、その後、次第に東南アジアで強くなる中国の影響力や、ベトナムの領海や共同漁区での強引な権益の主張に危機感を高め、アメリカとの安全保障での協力強化を進めています。

加えて、これらの国々にとって日本との関係も重要ではないかと思います。実際、すでに東南アジア諸国にはODAなどで日中を競わせ、有利な条件を引き出そうとする国が多く、また、艦船の寄港や機材の貸与などを通し安全保障で関係を深めようとする国もあります。TPP11は日本の外交力を高めるうえで有効と『チャイナ・エコノミー』の中でも指摘がありましたが、このようなネットワークを持つこと、さらにはソフトパワーで各国へ貢献したり市民に支持されることを通して、中国との交渉力を獲得することができるのでしょう。

最後に、前回の更新からの『チャイナ・エコノミー』パブリシティです。
4/23付の週刊金融財政事情の「一人一冊」で、神戸大学大学院教授の梶谷懐氏に「いま直視すべき中国経済の肯定的側面」というタイトルで『チャイナ・エコノミー』の書評をいただきました(白桃書房お知らせページへのリンク)。
また、解説の吉崎達彦氏(双日総研チーフエコノミスト)には、、ソニー銀行ウェブサイトの「プロを訪ねて三千里」でソニーフィナンシャルホールディングス執行役員の尾河眞樹氏との対談でもご紹介いただいています。

この後もパブリシティの情報が入ってきています。
公開され次第こちらでも告知しますので、ぜひご覧ください。

2018年5月1日 株式会社白桃書房 担当T