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 実証研究によると、日本は創業100年以上の企業数が世界で最も多いそうです。それでは、日本の老舗企業の永続経営の秘訣とは何なのか。この問いに対して、本書は丹念なインタビュー調査に基づいて、そのヒントを示しています。
 本書の特徴は、大きく三つ挙げられます。一つが、老舗学という総合的な概念を導入している点です。第二に、駅伝襷(エキデンタスキ)経営、木姿(キスガタ)剪定経営などの、読者に馴染みやすいメタファーが多く活用されていることで、読者に具体的な老舗経営のイメージを喚起させる工夫をしています。第三に、日本の老舗がどのように生成されて発展を遂げ現在に至るまで存続してきたのかという、歴史経路的な視点を提供していることで、老舗企業の経営が何から生み出され、次にそれが何を生み出すのかという時間的、空間的な広がりを説明しています。
 老舗経営のエッセンスを理解したい読者にお薦めの一冊です。[執筆:落合康裕(日本経済大学准教授)]

(前川洋一郎著、PHP研究所、定価1620円(税込))