いまや、名実ともに世界最大の自動車メーカーとなったトヨタ自動車。直近の売上高は約28兆円、営業利益だけでもゆうに2兆円を超えています。同社は、創業者の豊田佐吉にはじまり、喜一郎、章一郎、その後、非ファミリー出身の経営者をはさみ、2009年からは創業家出身の豊田章男が社長に就任しています。トヨタ自動車が世界的企業に成長・発展してきた要因は何なのでしょうか。
本書はトヨタ研究の世界的な権威であるジェフリー・ライカー教授による書籍であり、トヨタ発展の歴史について多くの示唆を提供してくれています。著者は、トヨタの生産システムに秘められるエッセンスを14の原則で示しています。特に、第一の原則である「短期的な財務目標を犠牲にしても長期的な考え方で経営判断する」とは、組織の存続を優先する多くのファミリービジネスで共通する価値観であるといえるでしょう。
本書は自動車産業従事者だけではなく、幅広い産業のビジネスパーソンに必要な知見が凝縮されている一冊となるはずです。[執筆:落合康裕(日本経済大学准教授)]
(ジェフリー・K・ライカー著、稲垣公夫訳、日経BP社、各巻定価2376円(税込))