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 バブル経済の崩壊からはや四半世紀、とうとう「失われた25年」とまで語られるようになりました。日本企業はかつての勢いを取り戻せるのでしょうか。
 本書では、三つの「経営の精神」(企業精神、営利精神、市民精神)の概念を提示し、この三つの経営の精神のバランスが崩れてしまったことが現在の日本企業の低迷に繋がっていると指摘しています。企業は合理性を追求して利潤の最大化を図る必要がある一方、過度な合理性の追求によって長年、日本企業が築き上げてきた大切なものが忘れ去られてしまったことが述べられています。
 企業の持続的な成長には、日々の実践にくわえて、その実践を支える精神も重要であることが示された示唆に富む書籍です。今後の日本企業を担う経営者やビジネスパーソンが、現在の自らの仕事を見つめ直す意味でも、将来を展望する意味でも、本書は貴重な処方箋を与えてくれる一冊となるはずです。[執筆:落合康裕(日本経済大学准教授)]

(加護野忠男著、生産性出版、定価1944円(税込))