チャイナ・エコノミー 複雑で不透明な超大国 その見取り図と地政学へのインパクト
アーサー・R・クローバー 著/東方 雅美 訳
/吉崎 達彦 解説

オリジナル版刊行から起きた地政学的な変動も踏まえつつ日本への示唆をまとめた「日本語版へのあとがき」と、著名エコノミスト吉崎達彦氏の解説も収録!

内容紹介][吉崎達彦氏 解説抄録][高口康太氏書評

第1章 中国の政治と経済
中国の政治システムはどうなっているのか。また、それが経済にどう影響するのか/中国は他の共産主義国の失敗から何を学んだか/中国は近隣の東アジア諸国から何を学んだか/誰が経済政策を動かしているのか/中国の広さと人口は経済発展にどう影響するのか/経済成長と政治的な統制の間で、二者択一をしなければならないのはどんな時か

第2章 農業と土地と地方経済
人民公社の解体が1980年代の中国の成長につながったのはなぜか/1980年代と1990年代前半に、郷鎮企業は中国の経済発展でどんな役割を果たしたのか/都市と農村の格差は、なぜ1989年以降拡大したのか/都市と農村の格差の問題に2000年代の政府はどう対応したか/中国の農民は自分の土地を所有しているか/農地の権利の改善のために何が行われているか/中国は自給できるか

第3章 工業と輸出経済の興隆
なぜ中国は巨大な工業国・輸出国になったのか/中国の産業開発戦略はどのようなものか/鄧小平の産業政策はどのようなものだったか/江沢民と朱鎔基の下で産業政策はどう変化したか/なぜ胡錦濤政権では産業政策が国家統制主義的になったのか/今後10年間で中国の産業政策はどのように変わるか/なぜ海外企業からの投資がそれほど大きな役割を果たしたのか/「産業政策」はどこが成功し、どこが失敗したか/中国は「ズルをする」のか/人為的に下げられた為替レートは、中国の輸出拡大でどの程度の役割を果たしたか/超低金利は重工業の成長を支えたか 80/中国はエネルギー価格を低すぎる水準に設定していたのか/知的所有権の侵害は中国の産業開発でどの程度の役割を果たしたか/中国の産業界はもっとイノベーションを起こせるか

第4章 都市化とインフラ
どのくらいの速度で中国は都市化してきたか/都市化は経済成長とどう関係しているか/なぜ中国人は都市化が「部分的だ」と言うのか/中国の「戸口」制度とは何か。どんな影響を及ぼしているのか/戸籍制度の改革はどのように進められているか/都市部の住宅私有化からどんな影響が生まれたか/中国は今、米国がかつて経験したような住宅バブルの中にあるのか/中国の2層の住宅市場からはどんな問題が生じるか/なぜ中国は多くのインフラを建設するのか/つくられたインフラはどのくらいが有用で、どのくらいが無駄なのか/「新型都市化計画」とはどのようなものか

第5章 企業制度
国有企業と民間企業ではどちらがより重要か/国有企業改革では何を目指したか/中国の国有企業は日本の系列や韓国の財閥と似ているか/国有企業はどのような形で運営されているか/国有企業集団はどのような構造になっているか/1990年代の国有企業改革には、どんなインパクトがあったか/国有企業セクターの規模は現在どのくらいか/国有企業は独占企業か/中央政府の国有企業は自由にふるまえるのか。あるいは政府の計画の実行役なのか/民間セクターはどの程度重要か/民間セクターはどのように発展してきたか/国有企業が前進し、民間企業が後退しているというのは事実か/民間企業が銀行融資を受けられないというのは本当か/今後、国有と民間の力のバランスはどうなりそうか

第6章 財政システムと中央・地方政府の関係
地方政府は、どのくらいの力を持っているか/分権化された政府は経済発展にどのような影響を及ぼすか/1994年の税制改革にはどんな意義があったのか/土地を活用した地方政府の資金調達はどのような仕組みなのか/政府の負債はどれほど大きな問題なのか/今日の財政システムの最大の問題は何か/財政改革プログラムは問題をどのように解決しようとしているのか/財政改革は中央と地方の関係や経済開発にどのような影響を与えるか/なぜ個人所得税は税制改革で重要ではないのか

第7章 金融システム
中国の金融システムにおいて、銀行の役割はどう変わってきたか/「金融抑圧」とはどのようなもので、それが中国の成長にどう影響してきたか/中国が金融危機に陥るリスクはあるのか/「影の銀行」をどれほど警戒すべきか 190/中国はどのようにして金利を自由化したのか/なぜ中国は為替レートを厳しく管理するのか/なぜ中国は人民元を国際通貨にしようとしているのか/人民元が重要な準備通貨となり、ドルを追い越すほどになる可能性はどのくらいか

第8章 エネルギーと環境
中国はどのくらいのエネルギーを使っているのか/なぜ中国のエネルギー強度はそれほど高いのか/中国はどのようなエネルギーを使い、その構成はどう変化しているか/中国はどのくらい輸入エネルギーに依存しているのか/中国のエネルギー利用は、気候変動にどのような影響を及ぼしているか/中国の環境汚染はどれほどひどいのか/環境問題の改善の見込みはあるのか/トップダウンによる環境問題の改善は上手くいくか

第9章 人口構成と労働市場
「人口ボーナス」とは何か/人口ボーナスはどんな影響を及ぼしてきたか/中国の「人口転換」はどう進むのか/国民の高齢化は労働力と経済成長にどんな影響を与えるか/一人っ子政策は何のために行われたのか/中国の労働者はなぜ農村部から都市部に移り始めたのか/国有企業改革は労働市場にどんな影響を与えたか/失業はどのくらい大きな問題なのか。賃金は上昇しているのか/「ルイスの転換点」とは何か。中国にとってはどんな意味があるか/あとどのくらいの労働者が農村部から都市部に移るのか/中国の労働環境はどれほど厳しいのか。改善する可能性はあるか

第10章 興隆する消費者経済
中国の成長は「不均衡」なのか。それは重大な問題なのか/中国の「不均衡な」成長は消費者にとって良くないのか/中国経済の個人消費の割合がそれほど低いのはなぜか/中国の「中間層」はどんな人たちか/「中間層」の規模はどのくらいか/中国の消費者は何を買うのか/中国の「セーフティネット」はどのくらい整備されているか、その強化によって消費は拡大するか/政府はどんなセーフティネットをつくろうとしているのか/消費を促進するために、政府はどんな政策を取るべきか

第11章 格差と腐敗
中国の格差はどの程度ひどいのか/格差の拡大が社会の混乱につながっていないのはなぜか/現在の所得格差の原因は何か/所得格差が縮む可能性はあるか/中国の汚職問題はどのくらいひどいのか/なぜ汚職で経済成長が止まらないのか/習近平の反腐敗運動は真の解決策なのか、あるいは見せかけだけなのか

第12章 成長モデルを変える
なぜ「中国は成長モデルを変えなければならない」と言われるのか/なぜ中国の成長は「不均衡」だと言われるのか/2008年の世界金融危機はどう影響したか/なぜ資本からのリターンが減少しているのか/習近平が考えている経済改革とはどのようなものか/反腐敗運動とは何か/なぜイデオロギー・キャンペーンが重要なのか/習近平の経済改革の中身は何か/3中全会以降、実際に行われた改革は何か。行われていない改革は何か/中国の成長モデルは変化しているのか/政治改革を行わずに経済改革は実現できるか

第13章 中国と世界
世界の政治・経済秩序はどのような性質を持っているのか/中国経済が世界最大になったら何が起こるか/中国の技術レベルは世界トップの水準に近づいているか/中国の経済面での強みは、政治的な影響力にどう結びつくか/中国経済が成功しているのは、貿易と投資で「ズル」をしているからなのか/経済の強さは中国にどんな政治力をもたらすか/中国は独自の国際機関を設立し、既存のものと置き換えようとしているのか/中国の成長モデルは他の国々にも導入できるか/中国の貿易と投資と援助は、世界にどんな影響を与えるか/中国経済の台頭は、世界にどんな課題を与えるか/中国の政治的台頭に、アジア諸国はどう対応すべきか/米国は中国の台頭にどう対応するべきか

日本語版へのあとがき
補遺 中国の経済統計は信用できるのか
解説 双日総合研究所チーフエコノミスト 吉崎達彦

著・訳者・解説 アーサー・R・クローバー 著/東方 雅美 訳
/吉崎 達彦 解説
出版年月日 2018/02/26
ISBN 9784561911395
判型・ページ数 四六・412ページ
定価 本体2593円+税